虫歯の原因であるミュータンス菌は、通常は口の中で漂っていますので、歯の表面が唾液で覆われている場合は簡単にはくっつくことができません。
しかも、唾液で十分満たされている口の中は、Ph7.0の中性ですので歯には最適な環境になっています。
ところが、砂糖が口の中に入ってきますと、ミュータンス菌はネバネバのグルカンを分泌して歯の表面に張り付きはじめます。
一度歯に張り付くとそこでさかんに増殖を始めて、次第に歯の表面に膜のようなものを作ります。
時間が経つにつれて、その膜は厚みを増していきますが、唾液はその膜の表面を流れるだけで膜の中には入れません。
ミュータンス菌はその膜の中で増殖を繰り返して、大量のグルカンを作り続けます。
この膜のことを「バイオフィルム」といいます。
自然界には数多くのバイオフィルムが存在しています。
たとえば台所の下水管に、ヌルヌルしたものが付着することがありますが、その内側で細菌が大繁殖します。
あんなものが口の中にもできていると思えば、わかりやすいかもしれません。
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象牙質を突破して歯髄までミュータンス菌が達すると、炎症がおこり突然激しい痛みに襲われることがあります。
この痛みは経験した人でなければわかりませんが、時には鎮痛剤が効かないほどの激痛です。
虫歯治療で「神経を抜く」というのは、歯髄を治療することです。
この段階が「C3(カリエス3)」で、このように神経を侵すほど虫歯が進行すると、エナメル質や象牙質といった部分はほとんど壊され腐ってしまうので、治療にはその部分を削り取らなければなりません。
もっと症状が進行して「C4(カリエス4)」に達すると、歯の根の先が化膿したり、歯根膜炎を併発し、最悪の場合は抜歯せざるをえなくなります。
また、大きく空いた神経の穴から顎の骨に細菌が侵入して感染しますと、大きく腫れて骨髄炎、歯根膜炎、骸骨骨髄炎などを起こすこともあります。
歯根の炎症部から細菌が血液に入り込み、心臓や腎臓、肺などの全身に影響する病気を誘発する場合もあります。
こうなると痛いだけでなく、治療も長期化し、最悪の状態になります。
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血液サラサラ効果を狙って健康のために黒酢を飲んでいる人がいますが、酢と同じくらいの酸が常に歯についていることになります。
ちなみに、黒酢を飲んでも歯が影響を受けないのは、すぐに流れてしまい歯に長時間ついていないからです。
酢と同じくらい強力な酸が、歯の表面についているのですから、歯を守る帽子の役割のエナメル質も傷がつきます。これが虫歯の第一歩です。
虫歯菌がエナメル質を溶かすことを「脱灰(だっかい)」といい、歯の表面が白くにごってきます。
しかし、エナメル質は知覚がないので、痛みやしみるといった自覚症状がないままに虫歯が進行します。これが「C1(カリエス1)」の段階で、虫歯菌を排除してフッ素などを塗っておくと自力で再生できます。
エナメル質の下にある象牙質は、エナメル質に比べる柔らかくなっています。虫歯が象牙質に至ると、より深く広い穴が空きます。
この状態になると、冷たいものや甘いものを食べるとしみるようになります。
象牙質には極細い象牙細管があり、その中を液体が通っていて、冷たいものが口の中に入ると象牙細管の中の液体が収縮し、温かいものが入ると液体が膨張することで温冷を感知しています。
また糖分と液体の浸透圧の差によって甘いものを感知するのでしみるようになります。この段階が「C2(カリエス2)」です。
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数ある細菌の中で、虫歯の原因となるのは、真珠のネックレスのような形をしているミュータンスレンサ球菌であることが確認されています。
ミュータンス菌と略して言われることが多いですが、実は7種類いるミュータンス菌の仲間の総称です。
ミュータンス菌はグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)という酵素を出し、餌である砂糖をネバネバした不溶性の「グルカン」というものに変え、それが歯の表面にべったりと張り付きます。とにかく砂糖を餌にすると俄然パワフルになり、大量にグルカンを作ります。
砂糖を餌にするだけでなく、作り出したグルカンまで餌にしてエネルギーに変えて活動するという効率の良さです。
歯の表面のエナメル質は本来硬い物質で丈夫なのですが、唯一酸に弱いのです。
エナメル質はPh5.5を境に溶け出す性質があります。虫歯菌が出すこのネバネバしたグルカンは、酢と同じくらいの強い酸でできています。
歯のエナメル質や象牙質の主成分はリン酸カルシウムで2日間程度酢につけておくと包丁で切れるほどに脆くなることからもわかるように、歯にとって酸は大敵です。
酸に侵されると、カルシウムイオンとリン酸イオンに分解され、硬い部分が溶かされてしまいます。
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歯と歯の間に白っぽい粘りのあるものがついていることがあります。ほとんどの人の歯についているはずです。
それを採って顕微鏡で見ると、たらこの粒のような丸いものや糸くずのようなものが動いているのがみえます。
もっと拡大すると、真珠のネックレスのようにつながっていたり、ぶどうの房のような形、あるいは棍棒が連なっているようなものもあります。
これらすべてが細菌です。
細菌は1ミリメートル角の升に、一億匹入る大きさといわれています。もちろん、人間にとって有益な細菌もいれば、悪さをするものもいます。
日和見菌(ひよりみきん)といって、通常は関係ありませんが、ある条件になるといきなり悪さをする細菌もいます。
どの細菌にも共通していえるのは、増えるスピードがとにかく速いということです。
1つの細菌は、30分で2個に分裂します。その後、4,8,16と2の2乗で増えていきます。
1つの細菌が24時間後には、275になっています。1億の細菌は24時間後には、275倍になっているということになります。
口の中全体を考えますと、いったい何億の細菌が生息しているのか想像もつきません。この細菌の大群の中に虫歯の原因菌もいて、虎視眈々と活動の機会を狙っています。
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